くまもと9条の会 全県活動交流集会 9/3



憲法問題と私たちの暮らしをどう結びつけるか?

--これからの学習運動の指針として--

 

くまもと九条の会事務局長 三澤 純

 

 2016年の参院選は、「自公とその補完勢力」対「野党4党+市民」という構図で闘われたが、これは日本の憲政史上初めての画期的な出来事であった。市民・野党共闘は、全国32の1人区全てで統一候補を立てることに成功し、11の選挙区で勝利した。最初の挑戦としては大きな成功であったと言えよう。特に、基地問題が抱える矛盾が深刻さを益している沖縄と、東日本大震災における復興・復旧策が批判を浴びている東北地方に代表されるように、住民にとって具体的な問題や争点をかかえている地域では、野党共闘が大きな力になった。

 そんな中、敗れはしたが、私たちが擁立した阿部広美候補は、こうした全国の統一候補の先駆けとなったのであり、その動きを支えた私たちの運動には歴史的な意義がある。しかし、その意義を共有した上で、それでもなお私たちはなぜ敗れたのかという原因分析を深いレベルで行う必要があると思う。九条の会は、選挙支援団体ではないから、そのようなことをする必要は無いという意見もあるだろう。だが今回の参院選で、衆参ともに改憲勢力が3分の2以上となったことを踏まえて、今後、どのような活動方針を立てるのかという課題に向き合うとき、今回の選挙における私たちの主張が有権者にどのように響いたのか(あるいは響かなかったのか)という問題は避けて通ることはできないだろう。

 九条の会が行う敗因分析は、選挙のプロたちが行うそれとは大きく異なる。それは、九条を主軸とする日本国憲法の精神と、私たちの日々の生活とがどのように結びついているのか、万が一、憲法が改悪されてしまった場合、私たちの生活はどう変わってしまうのか、沖縄や東北に学びながら、憲法と生活とを結びつける「具体的な問題や争点」、すなわち「媒介環」を見つけ出す作業になるだろう。事務局で話し合った結果、こうした作業には、従来までのような講演会という手法はふさわしくないだろうという結論に至った。熊本における「媒介環」は、私たちの実践の一つひとつを持ち寄って、それらを煮詰めて作り上げていくしかないからである。今回、くまもと九条の会が、9月3日に全県交流集会をもち、その成果の上に結成12周年企画を実施しようと考えている理由と背景とはここにある。

     

県下リレー総学習運動などできないか

~第1班討論から~

報告 吉田正昭

7名で分散会をひらきました。

1)9条の会として参議院選挙をどう闘ったか

震災・地震の後片付けに追われ、運動としてはチラシ配り、辻立ち位しか出来ませんでしたが、野党統一候補を擁立した意味は大きかった。そういう中で、相談窓口を開いたり、戦争法反対集会に150名集めるなど先進的な活動がなされました。選挙期間中に会報を出したり、支持者の掘り起こし等会員の団結は深まったと感じているなど、色々な意見が出されました。反省点として、保守に比べて地域での闘い・組織力、日常活動が絶対的に不足していたことが指摘されました。選挙闘争だけでは不十分で、今後の課題も明らかになりました。

2)それぞれの9条の会の抱えている問題点

結成当時は自分たちも若く元気もよくて、集まりも良かったが、この間若い人の加入も少なく結集も今ひとつと言った感じもあります。しかし、少人数でも毎月例会を開き、年に12回講演会を開いている現状の報告が出されました。今日出席の9条の会は良いとして、参加できていない9条の会、特に日常活動が困難になっている組織があるとしたら連絡・点検し、支え合うことも大切であるとの意見も出されました。

3)今後の活動の展開

大変な状況でも、会を維持してきたことが、大きな意味がありました。今回の参議院選挙の闘いでは、若い人・地域で考え、活動している市民運動家等と共に汗をかき話し合えたことは非常に良かった。若い人が少ないと嘆くだけでなく、自分たちで「戦争の歴史や体験を語り継ぎ、残していく」ことや、憲法を守る「戦争と平和・9条」という視点と併せて「生活と憲法」の視点も大切にして市民全体で共感しあえる運動・学習会の取り組みが大切である仔とが強調されました。改憲の動きが強まる中で、「自民党の改憲草案」やいくつかのテーマを設定して県下リレー総学習運動などができたら、県下の組織を強めることになるのではないかという意見もありました。

     

共闘の力を実感、憲法と暮しを結びつける学習の必要も

~第2班討論から~

                                  報告:荒木 正信

  7名班討論でした。自己紹介を兼ねて全員が発言しました。九条の会をつうじて「あそみん」を知り、初めて選挙を経験したという人、労組を中心に取り組んだ山都町、地震で一時壊れた体制を立て直して奮闘した益城町など参議院選挙のとりくみが主でしたが、「市民の運動なしに野党共闘は実現しなかった。」という認識を共有しました。しかし一方で、「市民運動だけでは変わらない。議会制民主主義のもとで多数が力」という現実があることも指摘され「政党間で政策の違いはあるが、一点での共闘は必要で有効」という点でも一致した意見でした。

  九条の会活動では、東部ネットの戸別訪問署名や、山都町の毎月2回のスタンディングなど「継続は力」と位置づけて取り組まれているという活動が報告されました。その報告の中から、もっと効果的に共感を広げるには,実際の生活に結びついた訴えが必要であるということになり、益城町から参加していた婦人は「ママさんバレーの仲間でピンとこない」と言う人でも『我が子を、自衛隊さんを戦争に行かせたくない』」といった身近な話になると伝わると話しました。三澤先生の基調報告にあった憲法と暮しを結び付ける「具体的な問題や争点」すなわち「媒介環」を見つけ出し、共有しあうという提起に対して、中国や北朝鮮の問題など、判りやすく 答えられるようになるためには学習がもっと必要という意見で一致しました。基調報告の熊本でも活発な運動を展開している「日本会議」について「どういうことを狙っているのか」「どういう活動をしているのか」をもっと知りたいという意見があったことも報告します。



一般の人にも気楽に参加してもらえるように

第3班討論より              
                     報告 藤岡崇史


班別討議の中で一番印象に残ったのは「(例会等での)話はとても内容はいいのですが、一般の方に気軽に来てもらうのには少し難しいのではないでしょうか」という意見でした。同じような内容の話が全体討議の中で「質実剛健すぎた」という表現で意見されたのですが、話の内容にしても、会報等のレイアウトにしても、これまで運動に関わってきた人向けに寄りすぎた傾向が今の活動にはあるような気がしています。
 しかし逆に言えばその点さえ改善すれば、9条の会の活動はこれまで以上に社会に影響を持つ可能性があるということだと思っています。世間迎合ということを恐れず、活動目的の本質をしっかりと守りながら、変えていけることは積極的に変えていかねばなならい、という意見にまとまりました。




「憲法カフェー」を無数に開こう

~第4班討論から~

報告 大畑靖夫

4班は、障害者九条の会、九条の会おおづ、益城九条の会、八代九条の会、宇城九条の会、天草九条の会、秋津・小楠九条の会の7名の構成でした。
 益城九条の会からは、熊本地震で会員、事務局ともに被災し、会議を開ける状況ではないこと、聞きとり調査の中で高齢の農家が農業を辞めざるを得ないような、国の被災支援のあり方が出されました。
 障害者九条の会からは、相模原障害者19人殺害事件等を起こした根底に、右傾化する潮流が深く関係しているのではとの問題提起がありました。
 野党統一候補のあべひろみさんの共闘を機に、これまで繋がりがなかった政党や労働組合との関係を持つ糸口が見つかったという意見も出されました。
九条の会おおづでは、中島岳志氏の講演会で200名を越える参加があり、若者からの発言が多かったこと、天草九条の会は、津田大介氏の講演に350名が集まったことが報告されました。知名度があること、マスコミでの宣伝も参加者を集める上で大きなポイントになっていることが浮かびあがりました。

また、基調報告で問題提起された、「媒体環」という言葉が班討論のなかで度々語られました。憲法九条、と聞くだけで難しそうでとっつきにくいのですが、憲法九条をいかにして、日頃の生活と結びつける具体的な問題や争点、いわゆる「媒体環」をみつけて、憲法九条を身近な敷居の低い話題にする工夫をして、若いお母さんたちにも理解して貰える「憲法カフェ」をたくさん開きたいとの意見も出されました。
12周年行事の具体的な要望までは行きつけませんでしたが、12周年行事の位置づけが鮮明に見えてきたのでは思う班討論でした。


「戦争はしたくない」と「かみ合う」話が大事だ

第5班討論から

報告 戸田 敏

天草、上天草、錦町(人吉・球磨)、八代、益城町、出水・白山、と事務局の7人で討論しました。
 天草からは、参院選の中で、天草は自民党、公明党の牙城であることが実感された。これに打ち勝つには上っ面の闘いではとてもかなわない。票を読んでくれる人をどれだけつくるかだ。そのためには、九条の会の日常活動の積み重ねが大事になる。学習と街宣を毎月行っていると報告された。
 錦九条の会では、自民の支配下とも思われる保育園などに、ビラを配ったが反応があった。若いお母さん方への働きかけが大事だと報告。
 八代九条の会からは、週1回スタンデイングを行い、述べ1000人以上のスタンデイングになった。毎月事務局会議や学習会を開き集会などにも取り組んできた。八代での共闘には九条の会の果たした役割が大きい
 益城町九条の会からは、九条の会のメンバーの多くが被災し、組織が弱体化した。今は暮しが一番という状況にある。益城には自衛隊員の家族が多く住んでおり、地域への働きかけには、相当の工夫が必要である。

 出水・白山九条の会は、2000万署名や、3000枚のビラを配り、地域での小学習集会を重視して系統的にやってきた。「戦争はしたくない」と言うごく当たり前の「かみ合う」話が大事だ。
 その他に、一人区で勝利した11選挙区全てで投票率がアップしている。戦争法の具体化を阻止していかなければならない。「憲法カフェー」のような、家庭の主婦や一般の人、若い人が参加できるような催しを地域に無数に開催していくことの必要性が強調された。尚、その時々の行動提起の必要も要望された。

 

     

九条の会に期待される役割はますます大きくなってきている

~閉会挨拶から~

 

戸田敏(くまもと九条の会事務局次長)の閉会挨拶の要旨は次の通り。

①改憲派が衆参両院で3分の2以上となった。改憲にむけて、国会発議の条件が整った。

②改憲に異常な執念を持つ安倍首相は、その任期中に改憲したいと企んでいる。安倍首相ならできる、安倍首相しかできないと多くの改憲派は考えている。

③日本会議は、活発な活動を展開している。
熊本県内には16の支部があり、熊本大学教育学部教授・高原朗子氏が旗を振って「美しい日本の憲法をつくる熊本女性の会」が職場、地域で細かく「憲法カフェ」や「なでしこカフ ェ」展開している。

④一方の、九条の会は、発足後10年以上経過し、老化現象も起きてきている。

⑤しかし、7月に行なわれた参議院選挙では、「戦争法廃止、立憲主義を守れ」の立場で、多くの市民団体と力を合わせてたたかうという貴重な経験をした。

⑥これ等の人たち働きかけて、地域に、大小を問わず、無数の学習運動を進めていこう。

⑦地域に根を張る九条の会に期待される役割はますます大きくなってきている。